変わらない青空

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「そうか、ナオ。俺は――…」 「佐神 龍斗…さんですよね?」 普段煩い龍斗が、何故か不意に黙り込む。 同じ目線に顔があるナオを見つめると、不意に微笑して口を開く。 「知ってた?」 「そりゃあ、日本一ですからね」 緊張感はナオにもあるだろう。しかし、それを顔には出さないのか、ナオも微笑しながら応える。 そんな至って普通の会話が弾んでいる中、列の真ん中では身長差の激しい二人が、会話を交わしていた。 「柊 蓮だ。宜しく」 蓮にしては珍しい、自ら進んでの挨拶。隣を歩く小さな少年は、不意に話し掛けられたからか体をビクつかせる。 「よろしゅくお願い…あれ?」 やっと落ち着き、口を開いたかと思えば、早々からの噛み。思わず口元が弛む蓮。 「それで、名前は?」 「く、蔵持 宗太(くらもち そうた)です……」 「チビって呼んでやってな!」 恥ずかしさの余りか、緊張からか、俯きながら話す少年。その言葉に付け加えるかのよう、蓮達の後ろを歩いていた少年が口を開く。 「チビか…? お前、名前は」 蓮が不思議そうにチビとその少年を見比べる。見た目、蓮と変わらない身長に、鍛えられた肉体。少なくとも聖城メンバーに含んでも、そのガタイの良さはトップクラスとも言える。 「渡瀬 信也(わたせ しんや)。シンって呼んで」 明昭の他メンバーに比べて、フレンドリーな口調のシン。外見が怖いからか、威圧感を放ってもいる。 「チビに、シン。今日は全力で行かせてもらうぞ」 緊張気味のチビに対して、真逆であろう心境のシン。そんな二人を見ながら、蓮はチビの緊張感を増幅させるような言葉を掛ける。 そんな光景を、月野は眠たげな様子で見守っていた。 「堂本 拓也(どうもと たくや)です。タクで、良いです」 列の前方。茶色の髪をツンツンにした少年が、隣を歩く純希に口を開く。 「右堂 純希です。って…俺達タメなんだから、敬語止めない?」 純希は微笑しながら、タクの気を一瞬にして楽にさせる言葉を吐く。 タクは頷くなり、深呼吸。 「やっぱり、聖城って強い?」 終わったかと思えば、尤もなことを聞いて見せた。
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