変わらない青空

25/56
前へ
/58ページ
次へ
「おい、タク?」 呆然としていたタクに気付いたカケルは、タクに声を掛ける。 「あっ、カケル…」 先程までは、見たことのない綺麗な女性が瞳に映っていた。しかし、今は信頼できるカケルが瞳に映る。 「どうしたのさ、そんな脱力しきって…」 「いやっ、何にもない!」 顔の前で両手を振り、否定するタクにカケルは微笑すると歩き出す。 「草壁先輩より好みだったの?」 すれ違い様。カケルはタクに訊ねながらも歩き続けていく。 タクが振り返れば、そこには何とも憎たらしい笑みを浮かべたカケル。 「気付いてたんじゃんか!」 小さい声で強く言い放つと、タクは微笑しながら息を吐く。 そこから今はもう、十八番と化したスリーポイントを放つ。 「綺麗なフォームだ」 ベンチに座りながら、呟くのは純希。 タクのスリーは、リングを射抜いた。それをその目で確認すると、思わず感想が口に出てしまったのだ。 「慧、そろそろ」 ブザーが鳴り響いた次には、咲が慧の名を呼びながらもスターティングの五人に言い放つ。 「集合!」 五人以外、アップを行っていたメンバーをベンチに呼び戻す。 呼ばれたメンバー達は、ベンチに座る。それを確認して、滝原にハイタッチしていく五人はコート上に立つ。 純白"だった"ユニフォームに、金色のライン、そして黒で書かれた「SEIJO」との文字。 背中に輝く背番号の上には、各選手の名字。 まさにそれは、バスケット界の頂点聖城高校のユニフォームであった。 それを身に纏った戦士達の前には、明昭高校のユニフォームを身に纏った、戦士達。 十人の戦士達は、心配を務める若菜の声によって握手を交わす。 センターサークル内には、龍斗とナオ。 身長差――一センチ。 体格も似ている二人の間から、今橙色のボールが宙を舞う。 そのボールに喰らい付く、二人の若きビッグマン。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

699人が本棚に入れています
本棚に追加