変わらない青空

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――風? ここは真夏の体育館。それも自分達が、毎日反吐を吐くような思いで、練習をしている場所だ。 だからこそ知っている。ここに、風が吹き込んでくることなど無いことを。 月野はハッとして後ろを振り返る。リバウンドに絡んでいる時点で、これは有るまじき行為。 でも、振り返っていいような気がしていた。 アイツが、アイツが来てくれる。そう、確信したからである。 月野の確信を得た予想は見事に的中したのか、空中では龍斗よりもナオよりも先に、慧がボールを掴んでいた。 そのまま慧は、体を前のめりにするなりリングに手を伸ばす。 「――…――」 慧がリングから手を離し、地に足を着けた時、体育館が静まり返ったのは言うまでもない。 「す、凄い……」 思わずタクの口から、本音が洩れてしまう。聖城メンバーの中でコート外に居る者達は、初得点が主将のダンクに盛り上がっているのか、神藤コールを繰り返すばかり。 「さぁ、これからだ!」 慧の一喝が館内を震わすと、その倍のボリュームが反応となり、更に館内を震わす。 「カケル……」 「やっぱ強いよな……」 強いのは分かり切っていたこと。しかし、その強さを目の当たりにした明昭メンバーの精神的ダメージは、半端の無い物だった――筈だった。 「まだ、始まったばかり。今までやって来たことをやるだけさ!」 そのカケルの言葉に、明昭メンバーの表情は明るさを取り戻す。
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