変わらない青空

30/56
前へ
/58ページ
次へ
チビが、人差し指を立てながらボールを運んで行く。 静静運んで行く訳でも無く、速いペースで運んで行く訳でも無い。至って普通のペースのチビは、辺りを見回す。 カケルは蓮に厳しく当たられ、パスが出せそうに無い。ならばタク。タクに回して中から、と言う考えは純希に読み取られているのではないかと思う程に、純希はディナイでパスコースを消す。 『俺が――』 『行って…い』 「チビ!!」 チビが、キープしながらも思考を働かせていると、不意にカケルの声がチビの名を呼ぶ。 チビがカケルを見ると、そこには頷いているカケルの姿。 少し緊張が溶けたのか、苦笑いながらも頷き返すと、チビは不意に慧の右側にドライブして行く。 勿論慧は、抜かれていない。しかしボールを奪うと言うところにまでは、至らなかった。 全てはチビの身長。チビは、その身長を生かして突っ込んで行く。その瞬間、フリースローラインに開いたシンがチビを呼ぶ。 「任せた!」 チビは体全体を使い、指先に力を込めてボールを弾き飛ばす。パスとして出されたボールは、見事シンの手中に収まる。 しかし、月野がそう簡単に見逃す筈が無い。結果パスカットまでとは行かなかったが、月野の当たりは傍から見ても厳しく、シン一人でどうこう出来る問題では無くなっていた。 「シン、こっち!!」 不意に、シンの名をタクの声が呼ぶ。 シンが反応して、声のする方へと首を動かすと、そこにはフリーの状態のタクがパスを要求していた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

699人が本棚に入れています
本棚に追加