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チビが、人差し指を立てながらボールを運んで行く。
静静運んで行く訳でも無く、速いペースで運んで行く訳でも無い。至って普通のペースのチビは、辺りを見回す。
カケルは蓮に厳しく当たられ、パスが出せそうに無い。ならばタク。タクに回して中から、と言う考えは純希に読み取られているのではないかと思う程に、純希はディナイでパスコースを消す。
『俺が――』
『行って…い』
「チビ!!」
チビが、キープしながらも思考を働かせていると、不意にカケルの声がチビの名を呼ぶ。
チビがカケルを見ると、そこには頷いているカケルの姿。
少し緊張が溶けたのか、苦笑いながらも頷き返すと、チビは不意に慧の右側にドライブして行く。
勿論慧は、抜かれていない。しかしボールを奪うと言うところにまでは、至らなかった。
全てはチビの身長。チビは、その身長を生かして突っ込んで行く。その瞬間、フリースローラインに開いたシンがチビを呼ぶ。
「任せた!」
チビは体全体を使い、指先に力を込めてボールを弾き飛ばす。パスとして出されたボールは、見事シンの手中に収まる。
しかし、月野がそう簡単に見逃す筈が無い。結果パスカットまでとは行かなかったが、月野の当たりは傍から見ても厳しく、シン一人でどうこう出来る問題では無くなっていた。
「シン、こっち!!」
不意に、シンの名をタクの声が呼ぶ。
シンが反応して、声のする方へと首を動かすと、そこにはフリーの状態のタクがパスを要求していた。
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