変わらない青空

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純希にボールが渡る。それと同時に走り出す、慧と龍斗。 純希は、走り込んでくる慧の方にボールを差し出す。が、慧はそれを受け取らずに走り去って行く。 無論チビは、このフェイクに引っ掛かり、慧をフリーにしてしまう。 慧にパスが来るだろう。こう踏んだナオは、龍斗を警戒しつつも慧のカバーに入る。 「甘いよ……」 不適に笑う龍斗。その笑みに、カケルは何か、不安感を覚えた。 「六番(龍斗)カバー!!」 言ったが、間に合う筈も無く。実際のところ、慧にパスは出されず、フリーとなった龍斗がボールを受け取る。 そして巨体は、空をも揺るがす。深赤色に彩られたフープに手を伸ばすと、橙色の球体を象られた円の中心に叩き込む。 聖城04-05明昭 これまでに無い焦燥感を覚え始める明昭メンバーに、経験豊富な聖城のメンバー。力の差など、歴然な筈――だった。 「タイムアウト、赤(明昭)」 「えっ!?」 ここでカケルもびっくりな、明昭のタイムアウトがコールされる。 「先生、いくらなんでも……」 駆け寄るカケル達の中から、カケルが代表して口を開く。しかし酒井は口を開こうとはしない。 「すみません、私が取ったんです。タイムアウト」 「遥……ちゃん?」 カケルの問いに、遥は気まずそうな表情をすると、決心が付いたのか話し出す。
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