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「私が見る限り、聖城の皆さんは勝ちに執着し過ぎていると思います。だから、必ず出ると思うんです、ボロが」
遥は、何を根拠にしているのか、聖城のメンバーがボロを出すと言い切った。
チビ、タク、シン、ナオの四人は理解ままならない表情をするが、カケルだけは違った。
「ボロって……例えば?」
「例えば、統制力です。勝ちたいが為、個人プレーが増えていくような気がして……」
そのカケルの問いに、遥は顔色一つ変えることなく答えていく。
カケルはその言葉に、うん、と大きく頷くと微笑しながら未だに不可解な表情をする四人と向き合う。
「遥ちゃんを信じよう!」
「で、でも……」
「考えてみなって! 相手は王者だ。でも、少しだけでもその統率された力に隙があるとしたら……突いてみるのが手の筈だよ」
そのカケルの言葉に、四人は魔法に掛けられたかの如く頷くと、コートへ歩き出す。
「遥、あんた良くそんなこと分かったね」
「え? えぇ、まぁ」
不意の酒井の言葉に、動揺しかける遥だが、平静を装って応える。
酒井は、少しばかり悔しそうな表情をするが、次には笑顔で端正な表情をクシャクシャにする。
『後は、大丈夫だよね』
普段、後藤(ごとう)と言う明昭の監督と言うポジションに就く男が居ないためか、代理である遥の気は引き締まっていた。
だからこそ、カケル達を信頼して言うことが出来た。
根拠など無い。しかし、カケル達に話しさえすれば、明昭にも光が射すと思ったから――…。
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