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真夏。とある校舎を、夏の日差しが照らす。その輝きは正に一級品。綺麗とは言えないが、波の音が心地良い海にも、その姿は映し出される。
「あっちぃぞー!」
そんな中、聖城(せいじょう)高校の体育館で、何者かが只でさえ暑いと言うのに、分かり切ったことをわざわざ叫ぶ。
「止めろ、佐神……」
隣に寝ころぶ少年は、無愛想な表情のまま、叫んだ少年の名を呼ぶ。
「もうー、だらしないよ?」
次に、可愛らしい声が体育館の乾きを潤すと、寝転んでいた少年二人は起き上がり、その声の主の周りに集まる。
「おお、結衣」
その声の主とは、高城 結衣(たかぎ ゆい)。あの日から一年。負け知らずな聖城高校は、今年の全国大会――…二冠を手にしていた。
そんな結衣に声を掛けるのは、少し大人びた表情の佐神 龍斗(さがみ りゅうと)。隣に立つのは、心底疲れ切った表情の柊 蓮(ひいらぎ れん)。
「普通、全国大会優勝二日後に、練習なんてするか?」
無愛想に訊ねる蓮に、結衣は悪戯っぽい笑みを浮かべると、蓮の前に立って軽く腹部を殴る。
「喋る元気はあるのね?」
「ご、ごめんなさい…」
一年前の面影はどこに行ったのかと、思わず訊きたくなるが、鬼マネージャーと化した結衣に、部員の誰もが逆らえず、渋々練習に取り掛かる。そこに、今大会優勝の立役者、神藤 慧(しんどう さとる)の姿と、その恋人である香坂 咲(こうさか さき)の姿は見られない。
「はい、集合!!」
相変わらずか、気合いの入った声で集合を促すのは顧問、滝原 綾乃(たきはら あやの)。一斉にダッシュする部員の姿を見る限り、新入部員が多いようで、それぞれが結衣のメニューに苦しんでいることが窺える。
しかし、この聖城高校は、スポーツ推薦を採っていない。故に、ここに集まった新入生は、一から勉強して入学したスタートラインも全て、同じメンバーなのだ。
「日曜日に、試合をするわよ」
疲れ切った表情。まず、その疲労を増幅させたのは、滝原の声。
「あら、嫌そうね?」
部員達から返事はない。それもその通り、全国大会後に練習試合を組む顧問など、普通は居ないのだから。
「あー、じゃあ質問」
龍斗が手を挙げ、滝原の目を見ながら立ち上がる。
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