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「……すいません」
深々頭を下げるのは、謝罪の言葉を添えた、表情を暗くしている蓮。
「バスケはね、五人でやるものなのよ? それは聖城だけに限らず……」
「分かってる!!!!」
少し和らいだ口調で、蓮に話していく滝原。その滝原に蓮の怒声が飛ぶ。
「分かってる、そんなこと!! でも……倒してーんだよ、アイツ」
蓮が声を荒げるのは、実に珍しいこと。それだからか、聖城のベンチは静寂に包まれる。
慧は、少し考えると不意にベンチから立ち上がる。
「交代だ、蓮……」
「……は?」
誰もが頭の上に、クェスチョンマークを三つ程浮かべた。冴えないとは言え、得点源プラスディフェンスの要である蓮の交代を、慧が口にしたのだから。
「交代選手は彰。まぁ、蓮は少し頭を冷やせ」
「おい、言ってる意味が――」
蓮が反応を示したところで、タイムアウト終了のブザーが鳴り響く。
「何だってんだよ!」
言い放ちながらも、ベンチに座り込む蓮。
交代の篠山は、急いでコートへと駆け出す。
慧の考えた意図――。
誰もが分からなかった、慧の意図を理解してる人物が、一人だけ居た。
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