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「何なんだよ……」
頭を抱える蓮の脳内を、慧の言葉がリピートする。
『頭を冷やせ』
勝ちたいだけ。ただ、実力で目の前に立ち塞がる敵を倒したいが為、個人プレーに走ってしまった。
けれどそれは、遠回しにチームの勝利に貢献したいから。
なのに――。
「あぁ、分かんねー…」
考えても答えは出て来ない。
悪影響を及ぼしているのは、分かっている。現に、その敵には勝っていない。
でも、次は勝つ。そう伝えようとしたところで、告げられた仲間からの交代。
『俺は必要無いのか?』
次第に、こんな思いに焦慮の意が変貌を遂げていく。
そんな蓮が居る聖城ベンチは、今も静寂に包まれていた。
「神藤君と篠山君と右堂君。スリーガードだなんて……」
やっとのことで口を開いたのは、滝原。今慧達はスモールフォワードを無くし、ガードに篠山を追加したスリーガード。
メリットとしては、ボール運びが安定し、何より速攻が仕掛けやすい。
しかしそれは逆に、本来外と中の役割を担うフォワードが消え、重要なリバウンダーが一人居なくなることになるのだ。
「相手の四番(カケル)には誰が……」
心配そうに呟く咲。
篠山が放ったミドルシュートは外れ、聖城のディフェンスとなる。
そのディフェンスになった瞬間、咲だけではない。体育館に居るメンバー全員が驚きの光景を目にする。
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