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「なっ、ゾーン……」
チビはボールを運びながら呟く。聖城が展開した唐突のゾーンディフェンスに、思わず驚嘆の声が漏れてしまったのだ。
トップに篠山、ゴール下には龍斗と月野。
『あれ、後の二人は――…』
束の間の思考を働かせるチビ。そんなチビの脇を、突風が吹き抜ける。
「チビ!!!!」
――遅かった。
チビの操るボールは、既に風が攫(さら)っていた。
その風は、ゴールを守る万人が居なくなったコートに難なく侵入すると、急に風速を上げ――稲妻の如く、リングへと突き刺さる。
「慧――考えるなぁ」
風の正体は慧。
そんな慧を見つめながら、思わず感嘆の言葉を口にするのは咲。
「トライアングルツーで、右堂君を五番に、神藤君は四番と八番――まぁ外のある四番寄りのディフェンスを取っている訳ね」
慧が考えた作戦。
それは、明昭のインサイドをゾーンで、そしてカケルとタクはマンツーで抑えると言うもの。
だからこそ、居ると調和が乱れてしまう蓮を外したのだ。
しかしこれは、まだ第一の理由にしかない。
「さぁ、ディフェンスだ!!」
明昭メンバーの表情が、不安の色を纏う中、慧の檄が館内に響き渡る。
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