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「どうした、佐神。お前が自主練だなんて…」
「おい、酷いだろ!」
酷い扱われように、思わず突っ込む龍斗。それに対して反応を見せることなく、得意のジャンプシュートを打ち込む蓮。
「あー、いたいた!」
そんなこんなで、自主練に取り掛かる二人。龍斗がフックを放った瞬間、体育館の扉が開き、そこから頬を赤くした少女が姿を現す。
「あれ、若菜ちゃん?」
そう。少女とは、神宮寺 若菜(じんぐうじ わかな)。一年前、幻風高校の頂点に君臨していた兄、神宮寺 健登(じんぐうじ けんと)と対決した聖城高校。見事勝利を収め、慧と真也の間に交わされた負けたら頭を下げると言う約束を、真也はしっかり果たし、若菜は自らの要望で聖城高校に残っている。
「顔、赤いよ?」
「走ってきたからね!」
「でも、どうして?」
龍斗が練習を一旦止め、若菜の近くに歩み寄ると、若菜は靴下のまま体育館内に入る。
「滝原先生が、今日用事で残れないから…管理ってやつかなあ」
若菜は微笑するなり、新しく体育館に設置されたベンチに腰を下ろす。
「――っはぁ…」
二面あるコート。龍斗と蓮のコートと真逆のコートでは、一年前には居なかった聖城の部員数人が黙々とシュート練習に取り組んでいた。
「あいつら……」
蓮までもが練習を止め、龍斗と若菜に歩み寄ると、その新入部員を見ながら呟く。
今年の新入部員は二十五人。偏差値が決して低くない聖城男子バスケ部に、二十五人もの新入部員が入り、活気に満ち溢れたと言う中、それぞれのプレーは「俺がやってやる!」との、ワンマンプレー。慧は、それに呆れたのか、中学時代全国の経験がある者でさえ、予選から出さなかった。それ故か、本気で試合に出たい奴は、こうして自主練を欠かさずやっていたのだ。
「すげーよな、特に満(みつる)と仁(じん)」
「馬鹿、あいつらだけ特別扱いすんなよ」
蓮の突っ込みに、ごめんと頭を掻く龍斗。若菜は、そんな光景を微笑ましく見つめると、何か思いついた表情で、満と仁を呼ぶ。
龍斗と蓮は、理解ままならない表情で若菜を見るが、若菜は理由を龍斗達に教えることなくその華奢な体を起こし口を開く。
「今から、この二人と一対一してみない?」
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