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いきなりの若菜の言葉に、驚いた様子の二人。龍斗と蓮は深い溜め息を吐くと、満と仁の反応を待つ。
その龍斗の目からは、断れとのオーラが、凄まじい気迫と共に放たれている。
「いや、俺らは……」
「あら、自主練してるのに出来ないなんて、矛盾してないかしら?」
頭の回転だけは早い若菜。次に来る後輩の言葉を読んだのか、真顔で尤もなことを言って見せる。
「神宮寺…いい加減に…」
「蓮君も! 結衣が聞いたら、メニューどうなるんだろうね?」
ふふっと不適な笑みを零す若菜。結衣を出されちゃ適わないと、落ち込む蓮に、勝ったと言わんばかりの表情を見せる若菜。
「じゃあ……やります」
龍斗も諦めたのか、満から視線を外すと、重い口調で満が言い切る。
「じゃあポジション的に、満君が蓮君と、仁君が佐神君とね!」
若菜は言い切ると、先ずは龍斗と仁の背を押す。
仁と呼ばれる定岡 仁(さだおか じん)。193との身長に、一年生とは思えない体格。言うならば恵まれたセンターと言うべきだろうか。
一方満。本名入間 満(いるま みつる)。179と比較的小さい部類に入る彼だが、類い希なる技術を武器に、中学時代は全国大会の経験までもがある。
龍斗と仁。
先ずは仁のオフェンスからで、龍斗は得意ではないディフェンスに力を入れる。
小刻みなフェイク。
仁は、引っ掛からないことに表情を曇らせると、スピード勝負に出たか、アウトドリブルから大股を踏み出し、一歩で龍斗を抜こうと試みる。
龍斗が付いていく様子は無い。
仁は、そのまま跳ぶとレイアップの体勢に入る。掌に乗ったボール。それは、次の瞬間勢い良くボードにぶつかる。
「レイアップに行くのが、早過ぎだ」
龍斗はそう言い放つと、ブロックしたボールを拾い上げ、仁のオフェンスにアドバイスをする。
仁は唇を噛みしめ、小さく「はい」と呟く。
次は龍斗のオフェンス。
龍斗は、小細工無しに仁の右側に突っ込むと、そのままボールを掴んだ手をリングに叩き付ける。
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