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「また実力上げやがって……」
独り言を呟く蓮。満は、龍斗のダンクに魅力されたか、感想すら口にしないで居た。
「ふふ、仁君は昔の佐神君そっくりね」
同じく、仁のプレーに感想を述べる若菜。その言葉を聞いて苦笑する龍斗。仁は悔しいのか、その光景をただただ見つめるばかり。
「満君、蓮君と……ほら、行った行った!」
戻ってくる龍斗と仁に入れ替わる形で、若菜に背を押される満。
あれ程怠そうにしていた蓮は、既にコートに入り準備をしている。
「……本気で行くぞ」
蓮は満を睨み、ボールを投げ渡すなり、ディフェンスの構えを取る。
しかし、蓮の"両手"には白いリストバンド。
「嘘つきだなぁ……」
苦笑する龍斗。
満は、蓮の目の前で小刻みなフェイクを入れると、一気に抜きに掛かる。
しかし――…蓮のディフェンスを前に、中学上がりのドライブが通用する程、蓮のディフェンスは落ちぶれていない。寧ろ更に磨きがかかってるとも言える。
「あっ!」
次に、乾いた音と満の驚いた反応が体育館に響き渡ると、ボールは蓮の手に収まる。
「……バレバレだ」
表情一つ変えることなく、蓮はボールを奪うと、満にボールを投げ渡す。
ボールが返ってきた次の瞬間、蓮は即座にドライブ。満は付いていくが、蓮のクロスオーバーからのロールに膝を崩し、尻餅を着いてしまう。
「……まだ、甘いな」
蓮は難なくシュートを決めると、そのボールを満に放り投げ、体育館を後にする。
「ちょっ……蓮君!?」
「……飽きた」
龍斗も、微笑しながら若菜に手を振ると、足早に蓮を追う。
「もうっ!」
「神宮寺先輩、俺ら、もっと練習していつか…先輩達を越して見せます!」
呆れる若菜に、蓮に完全なる敗北を喫した満が口を開く。その言葉に仁も頷くと、若菜は微笑みながら「期待してる」と残し、ベンチに座る。
「日曜日かぁ」
部室。全国大会優勝の賞状を二枚、龍斗が眺めながら呟く。
「早く来いっての……」
蓮は一点を見つめながら、小さく呟くと、立ち上がり部室を出る。
そこには――…"4"の番号を付けた、慧の姿があった。
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