‐file1‐浅木 沙夜

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私は家に帰ってから、母さんに怒られた。 うるさい、消えてしまえ。 そうイライラしていた私に、母は極めつけの一言を言い放った。 「汚らわしいわね」 ケガラワシイ? 私が汚らわしい? その一言が、私の心に青い炎をともした。 母さんなんか殺してやる。 そう思ったとき、朝のニュースを思い出した。 そう。 私には、人殺しの権利がある。 母さんは、私が父さんに殴られていたときも、タバコをすっては眺めていた。 きっと、怖かったんだろう。 でも、その一言は衝撃的で。 嫌悪感をこめて言う一言が、今までで何より傷ついた。 「ねえ、母さん……知ってる? 私は今日から、人殺しをしていいんだよ」 母は後ずさりをした。 汚らわしい私を、これ以上見たくないとでも言うように。 「まさか、実の親を殺そうとか考えていないでしょうね」 私は微笑んで、頷いた。 「その、まさかだったら?」  
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