‐file1‐浅木 沙夜

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私はその不可思議な物体を、まじまじと見つめた。 「ふうん? 外見は普通なんだ」 てっきり棘がついた、いがいがしたものが出てくるものだと思っていた。 が、それは普通の空き缶だ。 しかし、真っ黒なラベルの缶で、イラストすら描いていない。 あまりの気味悪さに、私は首をかしげた。 普通ならなんか書いてあるはずなのに、商品名すら書いていない。 「やっぱり飲むのをやめようかな……」 気味悪いこんなもの、飲む義務はないのだから。 そう思った私は、いささかもったいないような気もするが、ベンチにおいて帰ろうかとした。 ……と、そこで側面の小さな文字が目に入った。 「こんなところに?」 私は目を凝らして、何度も内容を読み返した。 あまりにも、奇妙な内容だったからだ。
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