‐file1‐浅木 沙夜

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それは説明文だった。 “これを飲めば、一つだけ願いが叶います。 その代わりに、大切な物を一つ失います。 その覚悟があるのなら願ってみるとよいでしょう” 正直、バカバカしいと思った。 いまどきそんなことを信じる奴が何人いると言うのだろうか。 その上、何でもというところが引っかかる。 言い換えると「空を飛びたい」みたいな非科学的なことも、叶えられるということだ。 ありえない。 しかし私は、その黒い炭酸水に興味がわいた。 願ってみようじゃない、かなわなかったら訴えてやる、と。 そんな悪戯をしたくなった私は、ダーク・サワーを一気飲みした。 そして願いを考え始めた。 「え~っと……じゃあ“塾がなく……”ううん。どうせなら、もっと大きな願いがいいわね」 迷っていたそのとき、ふっと私の頭に浮かんだのは、両親の酷さだった。
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