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少しずつ……確実に寄ってくる、二つの大きな魔力の根元。
そしてそれは、既に精神を研ぎ澄まさずとも感じ取れる程に近づいていた。
(この大きさ……下位クラスで収まるものじゃない。少なくとも中位……いや、これは……!)
「……なあフレイ、勝負しねぇか?」
フレイが警戒を解くことなく考えを張り巡らしていると、突然クラウドがそんなことを言い出す。
言葉を聞いたフレイはすぐに考えるのを止め、怪訝そうに表情を変えて耳を傾けた。
「勝負……?」
「魔物をどっちが先に殺るか……。
もしそれで俺が勝ったら、お前の正体を明かしてもらう。
そしてお前が勝ったら……もうお前のことを探ったりしねぇし、疑うこともしねぇ。
どうだ? これでさっきの話にケリがつくだろ」
言い終わると、クラウドは不適な笑みを浮かべて低く身構え始める。
それに対しフレイは、とっさに真剣な顔つきになって口を開く。
「クラウド、今はそんなことをしてる場合じゃない!
ルーツから溢れ出てる、この尋常じゃない魔力……もしかしたら…」
「何だよフレイ、ビビってんのか?
上位だろうが何だろうが関係ねぇ! ただブッ潰すだけだ!」
慎重に言葉を紡いでいくフレイだったが、クラウドはそれに耳すら貸さず嘲笑して遮る。
そして同時に足を踏みしめ、自ら魔物へと近づくために走り出した。
「ッ!? クラウド! 今動いたらッ……」
フレイはそんなクラウドを引き留めようと声を出すが、やはり聞く耳を持たず、クラウドは林の中へ消えていく……。
そして、それに対してフレイは険しい顔つきになると、後を追うように自身も走り出した。
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