真実 ~前編~

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息を呑んで前方の敵二体だけに集中するクラウド。 互いが互いを睨み合う中、少しの間静寂が訪れる……。 『……グオォオォオォォォンッ!!』 間もなくして、一体のウルフェンがその静寂を破った。 雄叫びを上げたかと思うと、もう一体のウルフェンが勢いよくクラウドへと駆け出す。 (使い魔を無理にでも連れてこればよかったぜ……) 一方クラウドは内心そう思いながら両手を前に突き出し、ブツブツと詠唱をし始める。 使い魔を連れてこれなかった理由……それは、以前のレイアの言葉の中にあった。 『……使い魔まで罰を受けることはないですからね。皆さんの魔封石は私がお預かりしておきます……』 「まあ気にする程のことでもねぇけどな! ……“ショック・マシンガン”ッ!!」 間もなくして詠唱を済ませると、魔法の名称と共に、クラウドの広げた両手から小さな黄色の球体が二つ出現した。 そしてすぐさまウルフェンに放たれたかと思うと、再び球体が出現してまたウルフェンへと放たれる……それが凄まじいスピードで繰り返される。 ……しかしウルフェンは素早くそれを避けていき、徐々にクラウドに詰め寄っていく。 地面に当たるばかりの魔法にクラウドは舌打ちをして悪態をつき、迫り来るウルフェンに当てるため精神をさらに研ぎ澄ませた。 ……と、その時、突然クラウドに覆い被さる黒い影。 それにすぐ気づいたクラウドは、魔法を止めて瞬時に大きく横へ跳ぶ。 するとその直後、クラウドの居た場所にもう一体のウルフェンが重みのある音と共に着地し、地面を抉った。 跳んだクラウドはやがて体勢を立て直すと、再び身構えて自分を睨む二体のウルフェンを見据える。 (チッ、一体に気をとられてたら殺られるか……) 険しい顔つきでウルフェンの動きに集中するクラウド。 その戦況は、言わずもがなウルフェン達に傾いている。
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