真実 ~前編~

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そして両手を後ろに組みながら、ゆっくりとした足取りでフレイに近づいていく。 その行動に危険を感じたフレイはすぐに片手を女へと向け、魔力を込め始めた。 「……あれれ? 魔法使っていいのかな。周りの草木に燃え移っちゃうよ~?」 「問題ない、火属性を使わなければいいだけだ」 口の端をつり上げて言う女。 対してフレイは淡々とした様子で即答する。 そんなフレイの言葉を聞いた女は歩みを止め、つまらなさそうに口をへの字にするが、少しすると口を開いて面白そうに笑った。 「あははっ……そっか! そういえばそうだよね! 『光属性』を使えば、なーんにも問題ないよねっ?」 そして、再び歩き出しながらそう口に出す。 フレイはそんな女の言葉に体を一度震わせて反応すると、怪訝さと不思議さを混ぜ合わせたような表情で女を見据えた。 「どうしてそれを……」 「“エア・クロウ”ッ!!」 ……と、その時、フレイから見た右手の林の中から聞こえてきた魔法の詠唱。 それとほぼ同時に、林の中から翠に光る月形の刃が二つ、女に向かって飛んでくる。 しかし、それに対して女は焦ることなくブツブツと詠唱を呟く。 そしてすぐに終えると、一瞬にして女を囲う黄色に光るドーム形の結界が現れ、間もなく翠の刃は結界と相殺された。 「……フレイ! 大丈夫か!?」 突然の出来事に思考が混乱するフレイ。 しかし自分に近寄ってきて立ち止まった三人の人物を見るなり、すぐに状況を理解する。 「先生っ……それにリオナとライル!」 「やっと見つけたわ……」 「へへ! ライル=ディストリィ、華麗に登場ってか?」 フレイの右側で安堵のため息をつくリオナと、左側で腕組みをしながら笑顔を浮かべるライル。 そして、目の前に居るガルディアは前方の女を鋭く睨みつけている。
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