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「……待て」
今まさに戦闘が始まる……ちょうどその時だった。
どこからか聞こえてきた青年の声が、戦闘に移ろうとしたのを遮ったのだ。
ガルディア達と女は魔力や殺気などを瞬時に抑え、声のした方を同時に見る。
するとそこには、先ほど女が居た太い木の枝の上に立っている、黒いローブで身を隠した者が一人……。
「……お兄、何で止めるのよ」
ほんの少し静寂が訪れた後、女が男に向かって突然そう言い放った。
すると男はため息をつき、少し間を開けて口を開く。
「お前……主様が仰ったことを忘れているだろう? 今回の任務内容は、神聖の焔の正体を確認することのみだ。
身勝手な行動をとるのは好ましくない」
「……むぅー……分かったわよ……」
男の言い分に対し、不満そうな声を漏らして納得する女。
そしてすぐに膝を曲げたかと思うと、男の居る枝の上にひとっ飛びで着地した。
その常人離れした行動に驚いたガルディア達だったが、相手が逃走するということを察するなり、すぐに止めた思考を呼び戻す。
「待てッ!! まだ他にも聞きたいことが……」
「貴公に言うようなことは何もない。
それより……いいのか?
今こうしてる間にも、大切な生徒が危険な目にあっているのだぞ?」
険しい表情で引き止めようとするガルディアだったが、落ち着いた様子でそれをあしらう男。
そして、それを聞いたガルディアは途端に怪訝そうな表情を浮かべた。
「そうだ……クラウド!!
魔物を倒すって言って、一人で探しに行ったんだ!!」
「え……!?」
同じく男の言葉を聞いていたフレイは、思い出したように反応を示す。
それに対して、リオナは不安気な表情を浮かべてフレイを見た。
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