真実 ~前編~

37/44
前へ
/366ページ
次へ
「……待て」 今まさに戦闘が始まる……ちょうどその時だった。 どこからか聞こえてきた青年の声が、戦闘に移ろうとしたのを遮ったのだ。 ガルディア達と女は魔力や殺気などを瞬時に抑え、声のした方を同時に見る。 するとそこには、先ほど女が居た太い木の枝の上に立っている、黒いローブで身を隠した者が一人……。 「……お兄、何で止めるのよ」 ほんの少し静寂が訪れた後、女が男に向かって突然そう言い放った。 すると男はため息をつき、少し間を開けて口を開く。 「お前……主様が仰ったことを忘れているだろう? 今回の任務内容は、神聖の焔の正体を確認することのみだ。 身勝手な行動をとるのは好ましくない」 「……むぅー……分かったわよ……」 男の言い分に対し、不満そうな声を漏らして納得する女。 そしてすぐに膝を曲げたかと思うと、男の居る枝の上にひとっ飛びで着地した。 その常人離れした行動に驚いたガルディア達だったが、相手が逃走するということを察するなり、すぐに止めた思考を呼び戻す。 「待てッ!! まだ他にも聞きたいことが……」 「貴公に言うようなことは何もない。 それより……いいのか? 今こうしてる間にも、大切な生徒が危険な目にあっているのだぞ?」 険しい表情で引き止めようとするガルディアだったが、落ち着いた様子でそれをあしらう男。 そして、それを聞いたガルディアは途端に怪訝そうな表情を浮かべた。 「そうだ……クラウド!! 魔物を倒すって言って、一人で探しに行ったんだ!!」 「え……!?」 同じく男の言葉を聞いていたフレイは、思い出したように反応を示す。 それに対して、リオナは不安気な表情を浮かべてフレイを見た。
/366ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14242人が本棚に入れています
本棚に追加