調査開始

6/6
前へ
/88ページ
次へ
落胆に声を落とし、深い溜め息を付く私。ここで、辞表という手がかりが見つかれば、捜査の動きも的を絞れそうなのだが。 「では、質問を変えますが……辞表を出したとなると、公平さんの退職金などはどういたしましたか?」 「ええ、ちゃんと支払いましたよ。総支配人がいうには確か、三百万を銀行振込みで」 三百万、か……それくらいが妥当な線だろうな。山本も嘘を言っているとは思えない。こういう調べれば、すぐにわかるような情報に嘘をつく奴は頭の悪いバカくらいだ。 「公平さんが突然、仕事を辞めたことに心当たりはありますか?」 「いえ。私も姫田君には辞める理由を何度も訊いたのですが、何も教えてはくれませんでしたから」 「そうですか。わかりました」 私は腕時計に目をやると、手帳を懐にしまう。 「もう、よろしいんですか?」 「はい。山本さんも奈美さんも忙しいところ、ご協力ありがとうございました。また、なにかあった時はよろしくお願いします」 と、最後に礼を告げると、私はさっさとホテルを出て行くことにした。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

265人が本棚に入れています
本棚に追加