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依頼~失踪事件~
一月二十六日。月曜日。
事務所の窓から眺める空はどんよりと暗く、週の始まりにしてはやる気が出ない天気だった。
私は散らかったテーブルを片付けることもなく、昼間からずっと読んでいた小説を読み終えたところで、時計に目を向けると既に夕方の六時になっていたことに気が付く。
息をひとつ吐くと同時に煙草を咥え、ライターの火を点ける。
つい四日ほど前に浮気調査を終えた私は、この三日間は退屈な日々を過ごしていた。
それでも退屈な時間が素直に幸せと思えるのは、生活面で特に不自由しないで済むほど、いつもは依頼が多忙にあるためだ。
検察官だった頃に比べれば、収入は劣るものの、今の私には多少、贅沢ができるほどの稼ぎがあった。
反対に仕事が多い時は、猫の手も借りたいくらいに忙しい。
正直、助手の一人でも雇いたいところが、どうも人と組むのは苦手だし、自分と反りが合う人間はまずいないと思っている。こんな調子では、やはり当分は一匹狼のままだろうな。
と、まるで他人事のように考えていると突然、チャイムの音が部屋中に鳴り響く。
おっと。
早速、仕事が舞い込んできたようだ……と、チャイムの音に素早く反応すると、吸っていた煙草を灰皿にもみ消し、書斎から出て、急いで玄関へ駆け寄る。
そして、すぐ鍵を開けて、ドアノブを回し「お待たせいたしました」と一声かけて、ドアを開けた。
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