終わりの始まり

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終わりの始まり

この病院の廊下を通るのももう何度目だろうか。   お見舞いに何度も通う寒い廊下でふとおもう。   苦痛ではない。むしろ自ら望んで通っている。 見慣れたドア。   ノックをして中には入る。   「こんにちは。」   ふと顔をあげる女。透き通るような白い肌と真っ黒なロングヘア。  「やぁ、いつもお見舞いにきてくれて有難う。学校は終わったのか?私なんかの見舞いより…」   「終ったよ。俺の学校より自分の心配してくれよな。早く直して昔みたいに一緒に学校に行こうぜ。」   言い終わらないうちに言葉を遮った俺に対して彼女は   「ふふっ、君に心配されるとはね。すまない、早く直してみせるよ。ありがとう。」 と素直に微笑む。 学校が留年ギリギリなんて口が裂けても言えないな…。   「外は寒かったろう?ほら、座って暖まるといい。」 ベッドの横に置いてある椅子を指差し急かす。   「雨が降ってるからね。相当寒いよ。ほい、今日の分のノート。」   授業の板書をしたノートを手渡す。今日は彼女の好きな国文学と俺の嫌いな医学だ。   「いつもありがとう。助かるよ。」   礼を言う彼女に 「礼はいいよ、にしてもお前は真面目だな。休学してるのにノートを写すなんてさ。」 と言う。   「学校に復帰したときに君と学年が違うのはいやだからね。それだけさ。」 と彼女は言って雨が映る窓に目を向け続ける。   「雨の日の散歩というものをしたことがないんだが、今から行ってみないか?」   なんだよ突然、 「体は大丈夫なのか?」 そう言うと頬を膨らませた。どうするかな…。   「今日は体調がいいんだ。じゃあ今回は屋上で我慢するから。ね?」   そんな顔されちゃ断れない。仕方ないか。   「解ったよ、ただし直ぐにかえるからな?」   「君のそういう所が好きだよ。傘は―、一本でいいな。」 心なしか顔を赤らめた彼女。 「自分でいって赤くなるなよ。」 言い終わる頃には部屋を出ていく彼女。 やれやれ仕方ない、屋上に向かおう。   寒い廊下と階段を経て重苦しいドアを開ける―
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