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ドアを開ける。視界に映るのは寂れ開けた屋上。
「やっぱり誰もいないな。」
同然の話だ。雨が降っている寒い日に屋上に来る物好きなんで俺達くらいなもんだよ。
雨が傘を濡らし揺らす。隣にはご機嫌な彼女。
あらかた屋上を歩き終わる。
「さて、帰るか。あまり長居して体に障るといけないしな。」
と帰ろうとすると洋服の裾に違和感が。
見ると彼女が裾を掴んでいる、その場を離れないまま。
「もう少し、幸せに浸りたいんだ。」
なにも言わずに彼女に来ていた上着を着せる。もう少しだけ、ここに居ることにしよう。少しだけ。
「君と相合い傘なんて夢みたいだ。もう死んでもいい。」
いままで一回も聞いたことのない言葉に驚く。
「何言ってんだよ、ほら、帰るぞ。」
「いや!だってもう来れないもん、君と相合い傘もできない。通学も、全部出来ない…。」
俺に抱きつく彼女、衝撃で傘が飛ぶ。
「お前、今日なんかへんだぞ?何かあったのか?」
嫌な予感がする…。
「先生に、もう長くないって…、だから、最後なんだ。」
彼女は泣いていた。雨の雫と彼女の涙が服を濡らす。
「そんな…、だって学校に復帰するって…。」
彼女が口を開く。泣きながらも、必死に。
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