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「ハル、頼むっ!!」
「頼むって言われてもなぁ。」
「僕が実業家だって誤解させたのは、ハルだろ!」
「そんなの、訂正しろよ。」
「訂正したら、相手になんてされないだろ?言い出せなくなったんだよ。」
「ま、そりゃね。分からなくもない。」
春樹は、カップ麺を啜りながら僕を見た。
「その、可哀想にって視線送るの止めてくれ。」
「だって、泣きついてるだろ?」
月曜日。店が定休日なのを良いことに、僕は、彼の部屋に押し掛け助けを求めた。
社長だなどという誤解をとかぬまま、あの姫川さんと会う約束をした。
僕は、せめて次の一回楽しみたくて、誤解をとくより社長になりきる道を選んだ。大会社の社長令嬢を前に、実は工場勤務のサラリーマンだとは言い出せなかったのだ。
「頼むから、女受けのいい服装とか映画とか音楽とか美味しい店とか教えてくれ。」
「俺が教えて効果なくても知らないぞ?」
「文句は言わない。頼む!」
「田舎のセレブじゃたかがしれてるだろうけど、参考になるなら教えてやるか。店に来てるお客さんで、セレブ系のお客さんが好きなもんと言ったら…──。」
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