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春樹の話をメモにとる。今日まで、何に対しても無関心・無感動に生きてきた僕にとって、彼女と釣り合うような、いや、せめて一緒に食事が出来るような男に化けるというのは、並大抵の努力で出来るものじゃない。
何しろ、ホモ疑惑が持ち上がるほど、遊ぶ相手は気楽な男友達ばかりだったし。実家に住む僕は、仕事から帰れば用意されている食事をたいらげ部屋に転がっていただけだった。
今にして、思う。
僕は、なんてツマラナイ男だったんだろう。
翌日、仕事帰り本屋へ向かった。緊張しながら手にしたのは、男性向けのファッション雑誌だ。
自意識過剰だと笑われるだろうが、カウンターの女性がこれを買う僕を見てどう思うのか。そればかり気になってしまう。紙袋を抱え足早に店を出ると、車を飛ばし家に帰った。
「加工終わったけど、これ急ぎの品物だったな。」
チラリと時計を見る。みれば、あと五分ほどで昼休みだ。僕は、機械の電源を落とし、製品を直接検査室に持って行く事にした。
「はい、これ。」
「あきと君、直接持ってきてくれたんだ。サンキュ。あ、もう昼休みだし、一緒に食べる?」
「ああ。」
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