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「付き合ってないって。ただ、週末に会う約束をしただけだ。」
「気になる~、相手誰だか言っちゃいなさいよ!」
「絶対、イ・ヤ・だ。」
膨れっ面な美香。それにしても、見てないようでチェックされてるものだ。一念発起して買ったエルメスの時計。今まで、千円均一の安物しか付けた事のなかった僕だ。鋭い美香の観察眼に脱帽する。いや、女性というのは、皆そうなのかも知れない。
「でもさ、らしくないね。」
「え?」
「あきと君らしくないっていうか…なんか、変。」
「僕らしいって、じゃあ何なんだよ?」
「うーん、そう言われちゃうと困っちゃうけど。無理してカッコつけて、意味あるの?」
「日頃、派遣の誰々がイケメンだとか、トラック運転手の誰々がカッコいいとかはしゃいでる美香に、聞かれたくない。」
「ま、そりゃそうね。失礼いたしました。」
…──確かに、美香の言うとうり“らしくない”のは分かってる。それでも、彼女に釣り合う男になりたい。彼女が僕の事をどう思ってるかは、分からない。ただの、懐かしいクラスメート程度だろう。でも、それでも僕は、気に入られたい。
時間遅れの一目惚れなんだと、思う。
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