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「洋食屋さん。地元の食材をメインに使って、低カロリーで健康に良い料理の提供をするつもり。もちろん、美味しい肉料理もあるけどね。」
「すごいな。お店の名前、決めてるの?」
「『天使の台所』。安直かしら?」
「そんなことない。素敵だよ。」
夜、僕は、彼女をフレンチの店に招待した。
「よく来るの?」
「まぁ、たまに。」
大嘘だ。春樹に教えてもらい、初めて訪れた店。春樹に頼んで、コース料理を選んでもらい予約した。緊張を隠して、何度も練習したテーブルマナーを実践する。…大丈夫、問題ない。
それから、映画や音楽について話した。春樹に勧められたものを必死で観て、聴いたものだ。
「こんなに楽しい食事、久し振りかも。今日は、色々ありがとう。」
「こっちこそ。」
「デザート、楽しみ。」
彼女が、笑っている。そこへ、ウェイターが最後のデザートを運びに来た。
そして。
「こちら、お連れ様からのプレゼントです。」
「え?…素敵、ありがとう柊君!」
「うん。」
アマリリスの白いミニブーケを受け取って、笑う彼女をみた僕は、とても幸せだった。
チクリと胸が痛む。
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