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皆から質問攻めにあって、彼女は少し困った表情(カオ)をしていた。
僕はといえば、皆の会話に聞き入るばかりで、目の前の焼き鳥を頬張りながら飲めないビールを口にしていた。
『柊君?』
彼女は僕が分かったのに、僕は彼女が分からなかった。今思えば、失礼な事をした。それに、すぐに気付けばもっと話も出来たのに。
後悔先にたたず、というやつだ。
口の上手いハルと違って、タイミングを逃すとなかなか話しかけることができなくなる。特に女性が相手だと、その傾向が顕著だった。自分でも子供じゃあるまいし、いい加減なんとかしたいのだが、生まれもった悲しい性質なのか、なかなか治らない。これだから、なかなか彼女も出来ず…──僕は、目の前のビールを一気に飲み干した。
「う、もう無理。」
「アッキー、大丈夫か?」
春樹に支えられながら店を出た僕は、すでに酔っ払いと化していた。世界ががユラユラ揺れている。
「ハル。僕は、もう帰るから、二次会行ってこいよ。」
「でもなぁ。」
「まだ終電あるし、駅だって近いんだ。ちゃんと、帰れるさ。ハルは、楽しんでこいって。店休みにして遊ぶなんて、なかなか出来ないだろ?」
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