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酔っていたのが良かったのかもしれない。いつになく僕は、饒舌だった。彼女とは、この町の話で盛り上がった。新しく出来た店の話、昔からある中学校近くのパン屋の相変わらずなおばさんの話…──気付けば、あっと言う間に降りる駅が近づいていた。
「今日は、楽しかったわ。ありがとう。そうだ、今度こっちに店を出すから、来週末また会えない?」
「え?」
「あ、そっか。そうよね、柊君にも彼女くらいいるわよね。」
「いや、いないよ!」
慌てて僕は、否定した。電車は降りるべき駅に着き、彼女に携帯の電話番号を教えた僕は、急いでホームに降りた。
「じゃあ、週末に。」
「ええ。柊君も、お仕事頑張ってね。」
プシュン!
ドアが閉まる。笑顔で手を降る彼女を見送った僕は、ふと大事な事を言い忘れた事に気付く。
『柊君、会社経営してるんだ?凄いわ。』
…──まずい。
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