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「今年も、この季節がやって来たわね。」
さっきまで僕の頭に乗っていた桜の花びらを指で遊びながら志奈が言った。
「そうだね。」
僕は桜を見ながら素っ気なく答えた。
桜を見るとあの時を思い出す。後悔と空しさと寂しさ。自分の全てが崩れてしまったあの時を…。
「どうしたの?優羽、大丈夫?」
ふと、桜から志奈の顔に目線を移すと今にも泣き出しそうな顔で僕の事を見ている。
しまったな…またやっちゃったかな?そう思いながら
「いつものが出ただけだから。もう、大丈夫だよ。」
と作り笑顔で答えて見たが…この顔は絶対納得してないな。仕方ない…僕は、彼女の頭を撫でながら「だから、心配しないで。ね?」っと囁いた。
すると泣き顔から徐々に向日葵のような笑顔に変わった。
相変わらず猫みたいだな。と思いつつも僕はこの時の移り変わりが好きだった。
そんな事を思いながら、笑顔で頭を撫でていた。志奈の髪は絹の様に軟らかく触っている方が気持ちいい。
「優羽も辛くなったら言ってね。頭を撫でてあげるから。」
「うん、そうするよ。ほら、志奈。あそこに猫…」
まだ喋ってる途中だったのだが、志奈はもう猫の側にいた。
志奈は嬉しそうに「猫猫~ね~こ~」と自作の歌を口ずさんでいる。
(本当に大丈夫だよ。志奈がいるだけで僕は…)
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