嫌味なあいつ

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「げ…一桁…?」 夏休みまであと一日。 つまり一学期終業式前日の今日は各授業のテストが返される日である。 二時間目の数学のテストを見て落胆の声をあげたのは篠崎苺、15歳 なりたてホヤホヤの女子高生だ。 「苺、まさか赤点…?」 隣で苺のテストを覗き見たのは愛川奈緒 苺の幼なじみである。 「ちょっと、見んなよぉ」 苺はもらったばかりのテスト用紙を机に放り込んだ。 無造作に入れられたテスト用紙は、当然しわしわになった。 その瞬間、ちらりと見えた点数に奈緒は驚いた。 「え…まさか9点?」 「み、見るなってば!」 慌てて取り繕うも時はすでに遅し。 奈緒は大きな目をパチパチさせた。 「一年で赤点はやばくない?苺大丈夫?」 苺は大きくため息を吐き机に突っ伏した。 「大丈夫なわけない。補習だ…」 教室の開いた窓から聞こえる涼やかな風鈴の音と、喧しく鳴く蝉の鳴き声が交差する。 しかしそのどちらも今の苺の耳には雑音でしかなかった。
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