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「青木くん、この子どうにかして。私には手に負えないわ」
奈緒が救世主でも来たかのように目を輝かせて言った。
「え?何、数学?それなら啓一に頼んだほうが確実だと思う。あいつあー見えて頭良いんだよ」
青木が苦笑してそう言うと、奈緒の目が光った。
「じゃあ渡辺くんに」
「私が教えてもらう!」
苺の言葉を遮って、びしっと手を挙げて奈緒が立ち上がった。
苺と青木はその勢いにポカンとした。
「な、何で」
「私も教えるほど数学得意じゃないし。分からないところいっぱいあるし。苺は青木くんに教えてもらいな!」
更に言い掛けた苺を遮りそうまくしたてると、奈緒はそれじゃあと言ってその場を後にした。
「奈緒の奴…ただ単に渡辺くんと勉強したいだけじゃん!」
苺が怒りをこめて奈緒の後ろ姿を睨み付けると、青木くんはどーどーと苺を静める。
「俺も得意とは言えないけどさ、力になるよ」
赤点は避けたいしね、と笑顔で言う青木に涙目になる苺。
青木くん、なんていい人…!
しかし数分後、青木は奈緒が自分に苺を押しつけた訳を思い知ることになるのだった。
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