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――……夕日で朱く染まった土手を自転車を漕ぎながら進んで行く。
今は夏を過ぎて秋になるかならないか、という季節だが、まだ頬に当たる風が生暖かく、額には微量の汗をかく。
奏「……帰って何するかな。」
俺は誰に言うでも無く呟き、やっぱり朱色に染まった土手で自転車を漕ぐ。
俺は、自宅に着くと鞄を布団に放り投げ、立て掛けてある自慢の愛器であるベースに手をかけた。
そして俺は、ベースと小さなアンプにシールドを繋ぎ、少しばかり外れた音をチューニングしてベースを弾く。
――アンプから流れる低音が心地良い。
俺は時間を忘れるように、ただひたすらに自由にベースを弾いていく。
……すると、1時間くらい経ったのか、という時間に携帯が鳴り響きだした。それはまるで俺の心地良い世界を破るかの様に……。
俺は携帯を取り、ディスプレイを眺める。
そこには、見慣れた人物からの名前が刻まれていてた。
俺の安らかな時間を破ってくれるのだから、よほどの要件でないと済まさねぇぞ?
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