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だけど今の関係が崩れるほうが怖い。
千香に思いを打ち明けたら…きっと今までみたいに触れてもらえなくなる。
だから私は動き出せずにいる。
「千香ちゃん!」
急に千香のことを呼ぶ声がし、思わず手を離してしまった。
「榊原さん!どうしたの?」
「来週の練習の話なんだけどねっ」
榊原さんは同じクラスの子。
誰にでも好かれる感じの明るくていい子なんだけど、あまり喋ったことはない。
そんな子が何故千香に用事があるのかというと、千香と同じ部活動をしているから。
千香と榊原さんは吹奏楽部に所属していて、二人とも幹部なのだ。
近々演奏会があるみたいで、最近多忙らしく二人で居るところをよく見かける。
…ちょっと妬いてしまう。
「ってことで、予定表コピーしとくからまたみんなに配っておいてね!」
「うん、わかった。ありがとう!」
榊原さんは手を振りながらグループに戻っていった。
「……仲良いの?」
自然に聞いたつもりが、不機嫌なのがわかりやすいぐらい表にでてしまった。
「仲良いって言うか……うん、まあそんなところかな」
「ふーん」
「どうしたの?」
「別に」
はぁ。
どうして素直になれないかな。
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