一日の終わりとメール

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「川崎先生。どうしました?」 開けかけた職員室のドアを閉めて川崎先生のほうを振り返る。 「あの、こないだ言ってた本。持ってきたんです。よかったらどうぞ」 そう言う川崎先生の手には一冊の小説。 タイトルを見てピンと来た。 少し前にあった塾での飲み会。 (この塾では講師間の親睦を深める意味も込めて、定期的に飲み会をしているのだ) たまたま隣に座ったのが彼だった。 色々話すうちお互いとある作家の本を好んで読むと言う事がわかり結構盛り上がった記憶がある。 その時、少し前に出た新刊を買ったのだと。 読み終わったらお貸ししますよ、と言ってくれたのだ。 「わ!覚えててくださったんですね!」 「もちろんですよ」 にこりと微笑む川崎先生。 うわぁ、マツゲ長いなぁ。 色も白くて、女の人みたい…。 女の私からみても綺麗なその顔に、状況をわすれてまじまじと見入ってしまった。
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