22058人が本棚に入れています
本棚に追加
もどかしい気持ち。
右手でぐっと涙を押さえた瞬間
月明かりが消えて
世界が暗闇になる。
すぐに伝わってくる、体温。
そこで始めて、抱きしめられている事に気付いた。
「狭山先生、それ以上言わないで下さい。諦められなくなってしまいます」
耳元にかかる優しい吐息と声。
「ごめんなさい。これで最後にするから…」
苦しいくらいに強く抱きしめて、震える声でそう言う川崎先生。
その瞬間の彼はとても小さく感じた。
悲しい、切ない、苦しい。
その気持ちが伝わって。そして体に心に染みこんで。
私は彼をぎゅっと抱きしめた。
「僕こそ、ありがとう。君を好きになって良かった」
溢れる涙の中で私ももう一度呟く。
ありがとう。
私を好きになってくれた貴方を、私は忘れません。
最初のコメントを投稿しよう!