ありがとう

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もどかしい気持ち。 右手でぐっと涙を押さえた瞬間 月明かりが消えて 世界が暗闇になる。 すぐに伝わってくる、体温。 そこで始めて、抱きしめられている事に気付いた。 「狭山先生、それ以上言わないで下さい。諦められなくなってしまいます」 耳元にかかる優しい吐息と声。 「ごめんなさい。これで最後にするから…」 苦しいくらいに強く抱きしめて、震える声でそう言う川崎先生。 その瞬間の彼はとても小さく感じた。 悲しい、切ない、苦しい。 その気持ちが伝わって。そして体に心に染みこんで。 私は彼をぎゅっと抱きしめた。 「僕こそ、ありがとう。君を好きになって良かった」 溢れる涙の中で私ももう一度呟く。 ありがとう。 私を好きになってくれた貴方を、私は忘れません。
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