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目を閉じて、ふぅ、と一度静かに深呼吸。
ゆっくりとドアに手を掛けて引く。
開けた瞬間、外の匂いがした。
?
正面を見ると、換気の為だろうか、窓が少し開いていた。
ゆらゆらとカーテンが揺れている。
その傍にぽつんと一つ置かれたベッド。
けれど、その手前には仕切り用のカーテンが掛かっていて、私からは葉の姿を確認できない。
そして、病室には先客がいた。
ベッドの足元に置かれた一脚の椅子。
そこに座っている人物。
こちらからは背中しか見えないが、長い髪を一つに束ねた姿から女性だと言うことは分かる。
私の気配に気付いたのだろう。
その人物がゆっくりとこちらを振り返った。
「どちら様?」
年の頃は32、3と言ったところだろうか。
とても綺麗な女性だった。
決して厚化粧などでは無いのだが、パッと華のある顔立ちをしている。
シンプルな白のワンピースにグリーンのボレロがとても良く似合っていた。
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