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……おかしい。
今、自分は『右手で自分の顔に触れている』のでは無かったか?
何故『鏡に映る自分』も右手で触れている?
脳が半ば茫然と状況を把握すると、A子は思わず後ろに後退る。
すると『鏡に映るA子』は『同じ歩幅だけ前に』進んだ。
よくよく見れば、疲れているように見え顔は、自分とは全く別人の中年女性の顔だった。
薄闇の中で鏡に映ったその女性の顔は、確かに『疲れている』ようにも見える。
が、自分とは髪の長さも違い、まるで似ても似つかないほど痩せこけていた。
その薄い唇が、ゆっくりと歪む。
徐々に吊り上がり、不気味な笑みをその顔に浮かべる。
もはや絶叫すら出来ずに、A子は必死の思いで階段を下へと向かって駆け出した。
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