予兆

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7月12日(火) 歴史の授業中。 窓の外、青空を見上げ考える。 今週の木曜日は創立記念日で学校は休みだ。 この日も小夜とデートの約束をしている。 何処に行こうかと考えていると、背中をつついてくる。 振り返ると秀一が四つ折りにした紙を渡してくる。 それを受け取り前を向いて、その四つ折りにした紙を開いてみる。 『今日の帰り家来ねー?新しいゲーム買ったから』 と書かれてあった。 僕は振り返り、OKの合図を出した。 放課後。秀一と靴を履き替えて校庭に出る。 『あの…』 と背後から声がしたので振り返ると、女の子がいた。 同級生のようだが見覚えがないので他のクラスの子だろう。 なかなか可愛い。 なんだか恥ずかしそうにしている。 まさか?これは…アレなのか?僕が? 僕はドキドキしていた。 イヤ、僕には小夜がいるじゃないか。何を考えているんだ。 首を振る。 その女の子は 『あの…北原君、私と付き合って下さい』 と秀一の前に立つ。 …まぁそうだよな、僕なワケないか。 ガックリときた。 秀一はというと…なんだかつまらなそうな表情で 『悪いがタイプじゃない、ゴメン』 と言って校門へと歩き出した。 『今のなかなか可愛いかっから付き合えばいいのに』 僕がそう言うと 『今のところ付き合うとか面倒だし、ああ言っておけばあきらめるだろ』 と興味なさそうに話す。 秀一の家に到着。 築20年位の二階建てのアパートで一階の一番奥が秀一の家だ。 秀一が玄関のドアを開けて中に入っていく。 僕もそれに続く。 『ただいまー』 秀一がそういうと、奥の部屋から顔が覗く。 『お帰りなさーい』 女の子だ。 年下のようだが、中学生かな。 『ええと、初めまして…かな?瀬川一樹です』 と挨拶してみる。 するとその女の子は 少し複雑そうな表情で 『初めまして、じゃないんだけど…本当に記憶喪失なんだね…私の名前は優(ゆう)だよ!』 『ゴメン、覚えてなくて…じゃあこれからもよろしく』 と返す。 『うん、よろしくね!』 と彼女は笑顔で返す。 『じゃあ、部屋に行こうぜ』 と秀一が促す。 『うん』 僕は秀一に続いて部屋に入る。 部屋は6畳程で意外にキレイに片付いていた。 『驚いたなぁ、片付いてるじゃないか』 僕は率直に感想を述べた。 『当たり前だ、結構キレイ好きなんだよ』 『妹が?』 『そうだ』 二人とも笑っていた。
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