覚醒

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7月22日(金) 古文の授業中。 僕は考える。 記憶は未だに戻らないものの、気になる事もない。 気になる…といえば、隣りのクラスの清水恵だ。 彼女に自然と目がいく…いや、断じて二股とかは考えていない。 確かに可愛いからついつい目がいくのも自然なのかもしれない。 浮気性とかではないと自分に言い聞かせる。 昼休み。 今日は天気もいいし、校庭の脇で食べる事にする。 天気がいいせいか、他の生徒の姿も見える。 僕は空いてるところに腰を下ろした。 弁当箱を開けると 『一樹君』 と声がする。 声のする方へ向くと小夜がいた。 正確には小夜ともう一人。 清水恵だった。 『こっちで一緒に食べない?』 と小夜に誘われた。 少し迷ったが、受ける事にした。 三人は清水恵、小夜、僕の順に横に並んで座る形になっている。 清水恵の反応をみるが、特に気にした様子もない。 どうやら付き合ってるのを知っているようだ。 僕は弁当を食べる。二人は仲が良いのだろう、話が弾んでいる。 僕はどう会話に入っていいのか分からず黙々と食べている。 まぁ元々食事の時は話とかはしないほうだし、話ながらとかだと食べ辛いからいいけど。 それに用事があってのんびり食べてられないし。 弁当を一番に食べ終えて片付ける。 時計を見ると12時20分。 『僕は次の授業で使う資料を取りに行かないといけないから、もう行くね』 と言って立ち上がった。 『もう行くの?分かった。じゃあ頑張ってね』 と小夜は手を振る。 清水恵も 『もう行くんだ?バイバイ』 と手を振る。 !? ズキリ。 頭が痛くなる。 なんだ?痛みがひかない…僕はその場に座り込む。 痛みとともに脳裏に清水恵の手を振っている姿が浮かぶ。 頭痛はますます酷くなってきた。 痛みでもう何も考えられない。 頭を抱え込む。 小夜と清水恵が僕の異変に気付き、声を掛ける。 『大丈夫?一樹』 その声は僕の何かを刺激した…急に頭痛がやみ、頭がスッキリした感じになった……… !!! 思い出した!全てを!! そうだ、僕は…事故にあったあの日。 彼女と会っていたんだ。 そこで振られてから帰り道にバスに乗って事故にあったんだ。 心配そうな二人に僕は 『大丈夫。僕は全ての記憶を思い出したよ』 ゆっくりと告げた。
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