覚醒

3/3
前へ
/21ページ
次へ
『僕は全ての記憶を思い出した』 その言葉を聞き、小夜の顔は青ざめた。 清水恵は驚いた表情をしている。 『本当に…思い出したの?』 小夜は恐る恐る聞く。 『うん。本当は僕達は付き合っていなかったんだ。本当に付き合っていたのは恵の方だよ…まぁ、振られたんだけどね』 少しバツが悪そうに言う。 それを聞き、小夜は校舎へと走っていった。 小夜を追いかけるか迷ったけどまずは清水恵だ。 清水恵は苦笑して 『そっか。思い出したんだ、一樹』 『恵のお陰かもね』と返す。 『一樹…私が言えた義理じゃあないけど小夜を攻めないであげて。 元はと言えば、小夜が書いたラブレターを私が代わりにあなたに渡した…それをあなたは私からだと勘違いして私に好きだと答えた。 それを聞き私は小夜の想いが叶わない事を知った。 どうせなら、と私は試しに付き合ってみる事にしたの…でも、やっぱり私には釣り合わなかったから振ったのよ。 そしてあの事故…記憶を失った事を知った私は、あの子に嘘ついて付き合ってる事にしろって勧めたの。 あの子はまだあなたを好きだったから…どうせ駄目なら記憶が戻るまでの間だけでも、付き合えた方がいいんじゃない?ってね。 あの子は純粋だから…』 衝撃だった。 僕の頭は混乱していた。 『…僕には…わからない…』 僕は校舎へと戻っていく。 清水恵はその後ろ姿を見つめ 『ハァ…我ながら損な性格かもね』 とつぶやく…その瞳には涙が浮かんでいた。 僕はまずは次の授業の準備をした。 教室へと戻り、小夜の姿を探す……が、どこにも見当たらない。 授業が始まり、放課後になっても彼女の姿はなかった。 他の人に聞いてみると、どうやら昼休みに体調が悪くなり、早退したそうだ。 僕はどうするのか、したいのかを考えていた…頭の中は混乱している。 家に帰りながら考える………答えが出ない。 やがて家にたどりつく。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加