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『僕は全ての記憶を思い出した』
その言葉を聞き、小夜の顔は青ざめた。
清水恵は驚いた表情をしている。
『本当に…思い出したの?』
小夜は恐る恐る聞く。
『うん。本当は僕達は付き合っていなかったんだ。本当に付き合っていたのは恵の方だよ…まぁ、振られたんだけどね』
少しバツが悪そうに言う。
それを聞き、小夜は校舎へと走っていった。
小夜を追いかけるか迷ったけどまずは清水恵だ。
清水恵は苦笑して
『そっか。思い出したんだ、一樹』
『恵のお陰かもね』と返す。
『一樹…私が言えた義理じゃあないけど小夜を攻めないであげて。
元はと言えば、小夜が書いたラブレターを私が代わりにあなたに渡した…それをあなたは私からだと勘違いして私に好きだと答えた。
それを聞き私は小夜の想いが叶わない事を知った。
どうせなら、と私は試しに付き合ってみる事にしたの…でも、やっぱり私には釣り合わなかったから振ったのよ。
そしてあの事故…記憶を失った事を知った私は、あの子に嘘ついて付き合ってる事にしろって勧めたの。
あの子はまだあなたを好きだったから…どうせ駄目なら記憶が戻るまでの間だけでも、付き合えた方がいいんじゃない?ってね。
あの子は純粋だから…』
衝撃だった。
僕の頭は混乱していた。
『…僕には…わからない…』
僕は校舎へと戻っていく。
清水恵はその後ろ姿を見つめ
『ハァ…我ながら損な性格かもね』
とつぶやく…その瞳には涙が浮かんでいた。
僕はまずは次の授業の準備をした。
教室へと戻り、小夜の姿を探す……が、どこにも見当たらない。
授業が始まり、放課後になっても彼女の姿はなかった。
他の人に聞いてみると、どうやら昼休みに体調が悪くなり、早退したそうだ。
僕はどうするのか、したいのかを考えていた…頭の中は混乱している。
家に帰りながら考える………答えが出ない。
やがて家にたどりつく。
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