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5月10日(水)
目を覚ますとそこは見知らぬ部屋の中だった。
部屋の中は白で統一されていて、花瓶に白い花が生けてある。
起き上がろうとすると、全身に痛みがはしる。
自分の体に目を移すと包帯だらけだった。
まるで覚えがないので困惑していると、ドアが開き、一人の女性が入って来た。
おそらく40代後半位にみえる。
その女性は僕の顔を見るなり
『一樹!気が付いたの?良かった~。事故に遭ったって聞いた時は心臓がとまるかと思ったわ。』
と早口でまくし立てた。
僕は
『あの…どちらさまですか?』
と聞く。
その言葉に
『何言ってるの?母さんじゃない!冗談言ってるの?』
と不安そうに聞いてきた。
『母…さん…なの?ごめん、思い出せない…僕は誰なのかも。』
母と名乗った女性はその言葉を聞き、青ざめて部屋を出ていった。
それから少しして医者が来て色々問診とかされた。
やはり記憶喪失らしい。
僕の名前は瀬川一樹(せがわかずき)17才の高校2年生で一週間前に乗っていたバスが、下り坂でカーブを曲がりきれずにガードレールを突き破り転落して全治2ケ月の大ケガを負ったそうだ。
そのせいで記憶喪失になったらしい。
母の名前は瀬川江美(せがわえみ)45主婦。
父の名前は瀬川裕二(せがわゆうじ)47会社員。
家族は3人で高山市の郊外に家がある。という所までが分かったところだ。
今はもう面会時間も過ぎて夜になっている。
母が学校に目覚めた事を伝えると言ってたから、そのうち友達が見舞いに来るはず。
病室には僕一人なので寂しい。
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