想い

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5時10分前に公園に到着する。 中を見渡してみる……小夜がいた。 ベンチに座り、うつむいている。 僕は深呼吸をして小夜に向かって歩き出す。 近づいていくと、彼女は僕に気付いて顔を上げるが、またうつむいてしまう。 小夜の前に立ち 『待たせたね』 と声を掛ける。 『ううん、私が早く来ただけだから…これじゃあいつもと逆だね』 力無く微笑む。 『僕はどうしても言わなきゃならない事があるんだ。 どうしてあんな嘘をついたんだ?』 『あの時、迷ったの…病院で聞かれた時。 ただのクラスメートと答えるか恵が言ったように恋人と答えるかを。 でも!ほんの少しの時間でもいい、あなたの恋人になりたかった! あなたが恵が好きで彼女と付き合ってた時もずっと! 後悔はしていない…でもあなたを騙していた事は謝ります。 ごめんなさい…さよなら』 小夜は僕に背を向けて去ろうとする。 『待って!』 僕は彼女の腕をつかみ、止める。 彼女はこちらを向き、戸惑っているように見える。 『まだ全部終わっていない、僕はまだ言うべき事があるんだ。 僕と付き合って欲しい』 小夜は驚いて 『え?どうして?私はあなたを騙していたのよ?』 『小夜だけが悪いんじゃないよ、清水恵から聞いたんだけど、あのラブレターは本来小夜からだったって。 僕が勘違いして清水恵に告白し、彼女もそれを受け入れた。 別に僕の事を好きなわけでもないのに、暇つぶし程度の気持ちでね』 自分で言ってて虚しくなる。 少し苦笑する。
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