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「僕は両親と五つ離れた兄と、叔父さんと五人で住んでいました」
「……そう」
陸斗も言葉を選んで話しているようだった。年齢に見合わない静かな話し方だった。
「母と叔父さんの親……僕にとっては祖父母ですね、は母が高校を卒業した頃に祖父母は亡くなったそうです。当時の頃の事は、二人は嫌がって詳しい話しはしてくれませんでした」
秋吉は黙って話しを聞いていた。
「八つ離れていた母は、高校を卒業して直ぐに働きに出て叔父さんと二人で暮らしていたそうです」
「お母さんが弟の叔父さんを育てたの……?」
陸斗は秋吉には答えずに話しを続けた。回すのを止めて、冷えたコーヒーの入った紙コップを見つめながら。
「母は同じ職場で会った五つ上の父と二十歳で結婚をして、二十一で兄を二十六で僕を産みました」
陸斗の口調は、本に書いてある物語でも読んでいるようだった。
「僕が四歳の時……でした」
初めて言葉に詰まった。
何があったんだ……。
「その日、叔父さんは大学のサークルの合宿で家に居なくてて、じゃあ、私達もとキャンプをしようと親子四人でハイキング程度の山登りに出掛けて………」
また、言葉に詰まった陸斗の唇は震えていた。
「それで湖の側の山道を昇っている途中……道を外れて……僕達の乗っていた車は崖から転がり落ちて……湖に落ちたそうです」
秋吉は口が開いたままになった。その秋吉を見ないまま、陸斗は話を続けた。
「僕は落ちた瞬間に開いた扉から放り出されで助かったんですが………父と母は車と一緒に沈んでしまって……車を引き上げた時にはもう………」
陸斗は言葉を詰まらせた。
「兄に至っては、遺体も見付からずに……」
陸斗はしばらく言葉が出なかった。
秋吉も掛ける言葉が見付からなかった。
「だから、大学を卒業したばかりの叔父さんが僕を育ててくれました」
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