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「相河君……それはとっても大切な事だ。だから僕は君に惹かれたんだよ」
陸斗が顔を上げると、秋吉は窓から差し込む光を背に微笑んでいた。
「‘過去’って……人が生きている以上、誰にだって‘過去’はある。必ず未来が有るように…。相河君、君はまだ十七歳だ。そんな君が、自分の未来に夢をみないでどうする?君が夢を叶えるために頑張ることで、観てる人が一緒に夢を見る事が出来るんだよ。夢は与えるんじゃない、一緒に見るんだ。舞台や映画、そしてテレビの中で。人間だけなんだよ、未来に夢を見る事が出来るのは」
秋吉は陸斗の正面の席に座り、両手を組んだ。
真っ直ぐに見つめて、一呼吸置いて陸斗に伝えた。
「僕に君が夢を見る為の手助けをさせてくれないか?前を見て歩こうよ」
陸斗はタオルを握りしめ、自分自身に確認するように呟いた。
「夢を見る為の手助け…?」
秋吉は頷いた。
「君が背負っている物は、僕も一緒に背負う。二人で持てば半分だ、少し軽くなるよ。何より、僕は君に惚れてしまった。一目惚れだ……あっ、惚れたと云っても、もちろん恋愛感情じゃないぞ」
秋吉は恥ずかしそうに笑って言った。
「惚れてしまった相手の苦しさや悲しみは、一緒になって背負いたいって……相河君、君も思うだろ?」
「………」
陸斗は応えなかった。
「まだ、分からないか……十七だもんな。その代わりに楽しい事や嬉しい事は倍だ!それなら分かるだろ?」
陸斗はタオルから顔を上げ頷いた。
「僕は君の苦しみや悲しみを一緒に背負う。僕と一緒に夢……見ようよ。そしてその夢を手にしよう。君が肉親が欲しいのなら、僕がそれ以上になろう。取りあえず、年の離れた兄貴ってことで……駄目かな?僕は本気だよ」
秋吉の声は静かだったが、はっきりと言った。
陸斗の中で、凝り固まっていた何かが割れて崩れ落ちた気がした。
この人なら助けてくれるのか……この人となら、前に行けるのか……。
陸斗はまたタオルに顔を付けて泣いていた。声を押し殺して。
この十七歳の少年は、幾度こうして泣いていたのだろう……
秋吉は切なくて苦しくなって、泣いている少年の肩を叩いた。
「もう、独りきりで泣かなくてもいいよ」
陸斗は泣きながら頷いた。
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