第二章 真実

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― 3 ― 二人は駅のホームで電車が来るのを待っていた。 さぁ、いろいろとやらなきゃない事が出来たな。取りあえずは……あっ、そうだ! 思い出した秋吉は、ポケットに無造作に入れてあった物を取り出すと、陸斗に声を掛けた。 「相河君、これ貰ってもらえるかな?」 ベンチで隣に座っていた陸斗の左手をとり、掌にそっと乗せた。 「これ……は?」 不思議な顔をしている陸斗の顔を見て、秋吉はまた‘ニッ’と笑った。 「僕から君へのプレゼント。僕は今日、本気で君を落とすつもりで来たんだ。お菓子は看護士さんへのいいお土産になったけど、これは君に」 掌の上に乗せたのは、リボンで括られた小さな箱だった。箱の上には、男子高校生の陸斗でも分かる有名なブランドの名前が書いてある。 陸斗はもう一度秋吉の顔を見た。 秋吉は笑って「開けて」と言った。 リボンを解き箱を開けると、箱と同じ色の小さな袋と一緒に入っていた物……銀色に光る星が下がっているピアスだった。 「僕に?」 秋吉は頷いた。 「穴……いくつか開けてるでしょ?」 「あ……」 陸斗は耳を押さえた。 そして、気まずいような顔して笑って言った。 「苦しくて……辛くてどうしようもない時に初めて自分で刺したんです。痛みで何だか忘れられたような気がして……こんなに開けちゃいました」 秋吉は、苦笑いをしている陸斗の肩をポンと叩いた。 「だから……これでもうおしまいだ。苦しかった時の思いをこれで塞いで、前に行こうよ」 「秋吉さん……」 陸斗は初めてニッコリと笑った。 ……なんていい顔で笑うんだ……。 秋吉は思った。
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