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二人は駅のホームで電車が来るのを待っていた。
さぁ、いろいろとやらなきゃない事が出来たな。取りあえずは……あっ、そうだ!
思い出した秋吉は、ポケットに無造作に入れてあった物を取り出すと、陸斗に声を掛けた。
「相河君、これ貰ってもらえるかな?」
ベンチで隣に座っていた陸斗の左手をとり、掌にそっと乗せた。
「これ……は?」
不思議な顔をしている陸斗の顔を見て、秋吉はまた‘ニッ’と笑った。
「僕から君へのプレゼント。僕は今日、本気で君を落とすつもりで来たんだ。お菓子は看護士さんへのいいお土産になったけど、これは君に」
掌の上に乗せたのは、リボンで括られた小さな箱だった。箱の上には、男子高校生の陸斗でも分かる有名なブランドの名前が書いてある。
陸斗はもう一度秋吉の顔を見た。
秋吉は笑って「開けて」と言った。
リボンを解き箱を開けると、箱と同じ色の小さな袋と一緒に入っていた物……銀色に光る星が下がっているピアスだった。
「僕に?」
秋吉は頷いた。
「穴……いくつか開けてるでしょ?」
「あ……」
陸斗は耳を押さえた。
そして、気まずいような顔して笑って言った。
「苦しくて……辛くてどうしようもない時に初めて自分で刺したんです。痛みで何だか忘れられたような気がして……こんなに開けちゃいました」
秋吉は、苦笑いをしている陸斗の肩をポンと叩いた。
「だから……これでもうおしまいだ。苦しかった時の思いをこれで塞いで、前に行こうよ」
「秋吉さん……」
陸斗は初めてニッコリと笑った。
……なんていい顔で笑うんだ……。
秋吉は思った。
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