第三章 それから

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秋吉と陸斗は、移動中のタクシーの中にいた。 車窓から見える街路樹の枝は少しずつ膨らみが目立ってきた。 陸斗は少し窓を開けた。 隙間から入ってくる冷たいばかりだった風も、心なしか温んできたように感じる。 もう春だな……。 陸斗の隣でスケジュール帳を確認していた秋吉が、視線をタクシー前方に変えた。 「陸斗、次の仕事まで時間がまだあるから、寄っていこうか」 「うん。僕も考えていたんだ」 秋吉は軽く笑って頷き「あっ、運転手さん、ちょっと近くの花屋さんに寄せてくれるかな」と、タクシーを走らせた。 陸斗と秋吉はお寺にいた。花屋に寄った後にコンビニエンスストアに寄り、お線香を買ってから陸斗の両親と叔父の墓所に来ていた。 行方不明の兄の墓は無い。叔父の弘志が『絶対に生きている』と信じて造らないでいた。 陸斗自身もまた、生きている事を信じていた。 陸斗は墓前に立ち止まった。 「……まただ。由香里さんかな」 彼岸やお盆、命日の時などに必ず花が上げられていた。確認はしていなかったが、陸斗は叔父弘志の元婚約者の由香里だろうと思っていた。 自分達が持参した花は下方に供えた。秋吉が点けた線香を上げると、陸斗は墓前に手を合わせ拝んだ。 (父さん母さん、叔父さん……俺、元気だよ。大丈夫だから) 背後から一緒に手を合わせいた秋吉の声に、陸斗は顔を上げた。
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