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秋吉は都心から離れた郊外の高校に来ていた。
「確かここの校章だったよな……」
常日頃、スカウトしようと中高生をよく見ている秋吉は、都内の学校の校章や制服をほとんど覚えていた。
「そろそろ終わると思うんだけどな……さぶっ……」
隠れていた学校敷地外に植えられている桜並木の枝葉は、もう落葉していて風よけにならず、日が射していなければもう寒さを感じた。
秋吉は大きめのマフラーをすっぽり被り、ポケットに両手を入れた。
「まだかな……」
下校する生徒達が、どうみても怪しい秋吉を横目で見ていた。
秋吉は居所無く、ウロウロした。
校庭に運動部員達が練習を始めた頃、校門から昨日の少年が友人と一緒に出てきた。
「相河、今日はどうする?」
「う……ん、どうしようかな」
どんぴしゃ!やっぱりここだ!
秋吉はスキップでもしたい気持ちになって、少年に近付いた。
「ねえ、君……相河君…?」
少年は振り向き、不思議そうな顔をして秋吉を見た。
「はい、俺……ですか?」
「そう!君!」
「相河、そのオヤジ誰?」
少年の友達が二人の間に入り、首を傾げる少年に問い掛けた。
「さぁ……」
「覚えて無いのか……昨日コーヒー掛けちゃったズボン、大丈夫だった?」
言って、秋吉は“ニッ”と笑った。
「あ……昨日の。大丈夫でしたけど、それだけで来たんですか?!」
少年は驚いた顔をした。
「違うよ。君……相河君、どこかモデル事務所とか入ってる?」
「は?入っていませんけど、何ですか?あなたは?!」
「やった!」
秋吉は思わず手を叩き、困惑している少年にジャケットの内ポケットから名刺入れを出し、中から名刺を出して手渡した。
少年は受け取ると、名刺と秋吉の顔を交互に見た。横から、少年の友達も同じ様に見た。最初に声を発したのは友人の方だった。
「相河……○×△事務所だってよ」
「俺、あまりそういうの分からないから」
「結構、おっきい所だぞ」
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