第一章 出会い

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少年は名刺を見ながら少し首を傾げていたが、顔を上げ秋吉の目を見た。 「その事務所の方が、何か用ですか?」 この目だ!間違いない! 秋吉の胸は躍った。 「君、うちの事務所に入って俳優にならないか!」 「ひゃーー相河!スカウトだよ、スカウト!」 少年の友人が名刺を少年から取って、名刺と少年と秋吉を見比べた。 少年は自嘲したような笑顔を見せた。 「ごめんなさい、興味ありませんから。武田、行くぞ」 言うと軽く頭を下げ、背を向けて秋吉と友人 ― 武田を残して言ってしまった。 「あっ、相河!待ってくれ……」 追い掛けて行こうとした腕を掴む感触がした。振り返ると、秋吉が腕を掴んで‘ニッ’と笑いながら言った。 「武田君、ちょっと教えてくれるかな?」 「は…はい?!」 「彼、相河君かな?名前と学年教えてくれるかな?」 笑顔だったが、目が笑っていなかった。その迫力に負けて武田は話してしまった。 「あ…相河陸斗。高3……17歳」 「彼…相河陸斗君に言っておいて。僕は往生際が悪いから、諦めないよって」 言って秋吉は手を離すと、ひらひらと手を振って武田を後にした。 駅に向かって歩きながら、秋吉は思った。 やっと見つけた……絶対に落としてやるぞ! 決心して、小躍りしたくなるような気持ちで駅まで走った。
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